当レポートは、英語による2024年4月30日発行の英語レポート「BOJ stands pat on policy but paves way for future rate hikes」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。


大方の予想通り、日本銀行は政策金利の誘導目標を0-0.1%に据え置くことを全会一致で決定した。今回注目すべき変更点は、日銀が総合消費者物価指数(CPI)の見通しを前回時点の前年比2.4%から2.8%に上方修正したことである。この見通しに沿って、日銀は物価の見通しに関するリスクは上振れ方向に傾いているとの見解を示した。

このように2%台後半となることを確実視する見通しは、リフレの「好循環」が維持されることを条件として、今後の利上げの道を開くものとなっている。4月の賃金データには、日本労働組合総連合会(連合)が報告した5%超の賃上げが反映される見込みであり、我々も大きく注目している。また、その後の賃金関連統計の発表を受けた声明にも注目したい。「好循環」の鍵となるのが実質賃金の好調な推移であることに変わりはないが、インフレ率が予想を上回れば、この好循環が崩れる可能性もある。日銀は目下、さらなる緩和縮小が可能なタイミングを見極めるべく、賃金関連を中心にデータを注視している。日銀にとって最も都合の良いシナリオとは、賃金の伸びによって物価上昇を吸収でき、消費または投資拡大のための余剰資金ももたらされるなか、利上げを継続できる状況になることであるとみられる。

予想された通り、植田和男日銀総裁は、足元の円の水準はまだ物価基調に大きな影響を及ぼしていないが、円安は物価見通しの上方修正につながる要素の1つであると述べた。これは、賃金が上昇するなかでも長期にわたって家計の購買力に影響を及ぼすほど円安が長引く場合は懸念材料になり得るという見方と整合的である。

その他にもドル円相場に影響を及ぼしてきた要因として忘れてはならないのが、米国の経済指標とそれがFRB(米国連邦準備制度理事会)の政策見通しに及ぼす影響である。当初はFRBが年内に複数回の利下げを実施すると予想されていたが、足元では利下げ観測が大幅に後退している様子だ。しかし、米国経済を見てみると、基調的インフレ率が減速を示している分野がある。したがって、米国のインフレ率が下振れし、利下げ実施が示唆される水準へと戻る場合、ドル円相場は調整局面を迎える可能性がある。

日銀は、国債買い入れを同程度の金額で継続するとの以前からの文言を削除した。このことは、日銀が現在保有中の国債が満期を迎えても国債購入額を減らして刺激策を縮小していく可能性を示唆しており、重要なポイントとなっている。


当資料は、日興アセットマネジメント(弊社)が市況環境などについてお伝えすること等を目的として作成した資料(英語)をベースに作成した日本語版であり、特定商品の勧誘資料ではなく、推奨等を意図するものでもありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社のファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。資料中において個別銘柄に言及する場合もありますが、これは当該銘柄の組入れを約束するものでも売買を推奨するものでもありません。当資料の情報は信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、情報の正確性・完全性について弊社が保証するものではありません。当資料に掲載されている数値、図表等は、特に断りのない限り当資料作成日現在のものです。また、当資料に示す意見は、特に断りのない限り当資料作成日現在の見解を示すものです。当資料中のグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。当資料中のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。なお、資料中の見解には、弊社のものではなく、著者の個人的なものも含まれていることがあり、予告なしに変更することもあります。