2011年2月14日
本日、上場の承認を得た新しいETFについて、ご紹介いたします。当社のETFとしては18本目と19本目のETFになります。当社のETFも本数が増えたなあと感慨もひとしおです。それぞれのETFの仕組み、分配頻度などの設計に伴なう課題を乗り越えた過程を思い起こします。今回の2本のETFは海外の資産を投資対象にした金銭設定・金銭償還型のETFになります。(ETTの設定方法についてのコラム「No.8 投資対象の広がりとともに改良されるETFの仕組み」)
先進国投資も新興国投資もこのETF1本で ~上場MSCI世界株
3月8日に東京証券取引所に上場する上場MSCI世界株(1554)は、MSCI ACWI=All Country World Index(除く日本)に連動をめざすETFになります。日本を除く、先進国、新興国44カ国の株式に一度に投資ができるETFです。昨年、当社は先進国の株式に投資する上場MSCIコクサイ株(1680)、新興国の株式に投資する上場MSCIエマージング株(1681)を立ち上げました。この2本のETFを85対15※くらいの比率で投資していただければ同じような投資効果が得られるのですが、投資家の方々からは全世界株式に投資するETFの要望が寄せられていました。ETFを組み合わせて投資をすることが、個人投資家の方には難しいこともありますので、利便性を提供したいと思いました。
一方、指数会社のMSCI社でも、投資家に新興国の成長を享受していただくことを目的に「コクサイからACWI(アクイ)へ」というキャッチフレーズでACWIを紹介しています。この同社の動きに同調するような形であれば、この上場MSCI世界株(1554)の認知が進むことも期待できるのではないかと思いました。MSCI ACWI=All Country World IndexのETFを組成するのであれば、日本も含めた本当の全世界にすることも考えられます。しかしながら、機関投資家にとっては日本が入っていると資産配分がしづらくなることや、ETF(日本の投資信託も同様)の基準価額算出ルール上、日本と諸外国の評価日が違ってしまい、指数をうまく加工しないと連動性が保てないといった問題も発生することがネックでした。そのようなこともあり日本を除く指数で組成することにしました。
この上場MSCI世界株(1554)は、上場MSCIコクサイ株(1680)と上場MSCIエマージング株(1681)がそれぞれ投資している先進国株式と新興国株式の私募投信に、上述のとおり85対15程度※で投資します。この比率は先進国株式と新興国株式のそれぞれの時価総額の変動に伴なって変化します。その私募投信は世界各国の先物を中心に運用しています。諸外国の税制に円滑に対応するために先物を活用しているのですが、新興国のリスクを限定的にする効果もあります。というのは、先物は投資の一部を証拠金として投資先現地へ納め、残金は日本の口座に保全されています。よって、不測の事態が投資先の新興国で起こり証拠金が没収されても残金は日本に残り、その影響は限定的になるということです。
※2011年1月末現在
豪州物件だけではない豪州リート
次に3月9日に東京証券取引所に上場する上場Aリート(1555)は、オーストラリア株式市場の動きを表す代表的なS&P/ASX200指数に含まれる豪州リート部分を取り出したS&P/ASX200 A-REIT指数に連動をめざすETFです。原則、同指数に含まれている全銘柄の豪州リートを指数どおりの比率で投資する運用を行ないます。奇数月に決算を行ない分配する方針です。年に複数回分配するタイプのETFは、当社では上場Jリート(1345)、上場外債(1677)、上場高配当(1698)に続くETFになります。また、当ETFの構造は、当社の外国資産に投資する一連のETFと同じくファンド・オブ・ファンズになっており、上述の上場MSCI世界株(1554)のように、豪州リートの私募投信を将来的に別のETFで活用する必要が出てきたときに対応するための仕組みです。これは運用資金を集約化できるようにしておいて、ファンドの運用資産を大きくしてコストを引き下げるための工夫です。
今回、豪州リートを立ち上げる目的ですが、現在、ETFでも投資信託でも、昨年の日銀のJリートの買い取りが始まって以来、ちょっとしたJリートブームになっています。価格も相応に上昇していますので、リートに投資するなら分散投資対象が必要であると考えた次第です。そこでまず、頭に思い浮かぶのがグローバルリートなのですが、米国や欧州の一部の国で税処理が難しいところがあります。一方、豪州は、普通の家賃収入、不動産売買益、元本の払い出しの分配があり、複雑なのですがその処理方法は確立されています。豪州のリートの面白いところは、リート単体でグローバル化しているところです。代表的なウエストフィールドという豪州リートの、2010年6月発行のレポートを見ると、保有資産(不動産)の49%が豪州、33%が米国、14%が英国、残りの4%がニュージーランドになっています。このリートに投資をすると、豪州のリートへの投資を通して世界各国の不動産に投資をすることになります。分散投資対象として有効だと考えた理由です。
当社としては、投資家ニーズを組み取り、質の高いETFを引き続きご提供していきたいと考えています。
ETF の仕組みとして良いところを最大に活かし、悪いところをうまく折り合いをつけていくことが商品を開発する者の使命であることを肝に銘じ、投資家の方々が理解しやすいものにすることも大事にして商品を開発し続けたいと思います。引き続き日興アセットマネジメントのETF、上場インデックスファンドシリーズをよろしくお願い申し上げます。