2013年6月26日
黒田総裁の日本銀行の異次元の市場流動性提供ツールとしてETFが認知されています。また、機関投資家・個人投資家の運用ツールとしてのETFの地位が確立されつつあります。その流れを受けて、新聞紙上等でもETFの話題が増えてきました。日本銀行のETF買付を運用として捉えると、現状素晴らしいパフォーマンスになっています。これは各投資家にとっても参考になるのではないかと思いましたので運用と捉えて考察したいと思います。もちろん、日本銀行は運用ではなく、市場への流動性提供を目的とした政策としてETFを購入していましたが、市場の低迷時、しかもバリュエーションでは極めて安値に放置されていた株式を下落時に保有し、長期保有を行なうと、大きなリターンで報われるのだということを、改めて認識させられました。
日本銀行のETF保有状況
含み益最大 1兆850億円、含み損最大 1,144億円
2010年12月15日から日本銀行が買い始めたETF(日経平均とTOPIXのETF)は、2013年6月17日現在、累計購入残高は1兆8,721億円になっています。(注:日銀発表分を単純に加算したもので、億円未満の数字の累積で実際の残高とはずれがあると思われます。)
日銀は、TOPIXのETFも買っていますが、このグラフは、日銀が日経平均の引け値でETFを買ったと仮定して作成した保有状況の推移です。青い折れ線グラフが日経平均の推移です。薄いピンクの面(右軸)は日銀のETFの買付累計額、緑の面がETFの含み損益額の推計値になります。ここでは、日経平均の変動のみで含み損差額を推計したあくまで目安の計算です。含み損は、最大1,144億円(2012年6月4日)、含み益は最大、日経平均が16,000円を突破しかけた2013年5月22日の1兆850億円になります。その後の下落により、2013年6月18日時点では5,901億円の含み益となっていますが、市場の低迷時、しかもバリュエーションでは極めて安値に放置されていた株式を下落時に保有し、長期保有を行なうとこのような形で報われることの一例と思います。
しかしながら、誰でも2012年6月4日の含み損が1,144億円の時には、運用の継続に自信が持ち切れなくなると思います。また、バブル崩壊後、投資家、特に機関投資家の間ではリスク管理の徹底が叫ばれ、一定の評価損益率に達するとロスカットをするルールを定めている投資家もあります。
このグラフは日経平均と日銀の保有するETFの評価損益率(緑の面)です。含み損率の最大値は、-15.19%(2011年3月15日)になります。その後も何度か-10%を超えるところがあったので、ロスカットルールを定めている投資家はETFを保有し続けられなかったかもしれません。2012年11月から政権交代・アベノミクスへの期待から反転した市場の恩恵を受けて、含み益額・含み益率は劇的に改善していきます。一度、含み損を経験してしまうと、ちょっと反転、損益が回復すると売却して利益を確定してしまいがちなのですが、一度も売却していない日銀のETFポジンションは2013年5月22日に63.16%の含み益率にもなりました。その後、市場の調整によって、30%程度の含み益率に落ちています。このようにしっかりと持ち切ることができるのは日銀の政策だからとも言えなくもありません。また市場調整が進めば含み益から含み損になってしまう可能性もないわけではありません。
長期で保有する日銀のスタイルを見習う
市場の不確実性に向き合うために、日銀のスタイルを投資手法として参考にする
日銀スタイルで、NISAにETFを活用する
「不確実な市場の将来を正確に予測することは難しい」という事実から、どのように市場と向き合うかは、これからも投資家の頭を悩まし続けるでしょう。そのような場合は、原理・原則に立ち返ってその取組方針を考え、それを実直に実行していくことしかなく、その際に日銀のETF保有行動が大いに参考になるのではないでしょうか。
ETFの投資対象としている株式は、企業がその事業を行なうための元手(資本)を調達した見合いで発行される有価証券です。企業はその活動を通じて成長(資産の拡大)・収益を生み、その成長(資産の拡大)・収益を受け取る権利、財産の持分権等を表したものが株式です。その成長の実現や収益の獲得には一定以上の時間が必要です。株式は需給要因を反映して値動きが激しい資産ですが、株式の本来価値を享受しようとすれば、今般の日銀のような投資行動が求められるのではないでしょうか。市場の低迷時、しかもバリュエーションでは極めて安値に放置されていた株式を下落時に保有し、長期保有を行なうことがより正しい投資なのかもしれません。
これからNISA(少額投資非課税制度)がスタートしますが、日銀のようなスタイルのETF投資も良いのではないかと思います。例えば、100万円の枠を上場日経225(ミニ)(1578)のような小口で投資できるETFを、市場の調整時に数万円くらいずつ買い付けていくというのもおもしろい投資方法ではないでしょうか。
日銀のETFの保有のスタイルは、機関投資家から個人投資家まで大いに参考になると思います。ぜひETF(上場投資信託)、日興アセットマネジメントの上場インデックスファンドシリーズの御活用をご検討ください。