大震災、ユーロ市場の混乱と、本当に激動の2011年も残すところわずかとなりました。当社のETFの新規上場は震災前日3月10日の「上場中国関連株50」以降ありませんが、引き続き様々な新ETFを研究中です。日興アセットマネジメントのETFにご期待ください。

その新しいETFの検討の傍らで、今年もアジア各地でETF市場の情報収集に有意義な機会がありました。8月末に香港、9月の中旬に上海、11月には香港・シンガポールで行なわれたETFカンファレンスです。おととしから、それぞれ2回ずつ参加しており、11月の香港・シンガポールのETFカンファレンスでは、ジャパンセッションのパネリストとして参加しました。今年も英語のネイティブスピーカーに添削してもらい原稿をしっかり用意しましたが、ちょっと格好良く見せたい助平心で、英語らしい言い回しではあるものの使い慣れない言い回しを入れておいたのが失敗の元でした。シンガポールのセッションで、その言い回しを読み間違えて気が動転し、加えて会場から質問もあり、汗びっしょりになってしまいました。もう格好良く答えようなどという気持ちの余裕は無く、回答することのみに集中していました。セッション後は、本当にぐったりして、早く日本に帰りたいと思いました。でも、セッションのモデレーターからは、会場からの質問に回答しているときの発言が一番良かったとフォローされました。背伸びをして、格好良くしたいといった余計なことを考えるとろくなことが無いと反省しました。

さて、これらのETFカンファレンスに参加したときに比較で気づいたことがあります。それは日本においてETFについてなかなかご理解いただけないポイントは海外でもやはり同じということです。それはETF自体の認知とその流動性についてです。

『ETF自体の認知』が上がらない

ETFとは、英語の”Exchange Traded Funds”、日本語では「上場投資信託」ですが、名前が横文字で認知しづらいとか、日本語にすると長くてイマイチだとかよく言われます。東京証券取引所が懸命にETFの普及活動をしていることもあり、少しずつ個人投資家にETFの認知が向上しているという調査結果もあります。しかしながら、全般としてはまだまだといった実感です。

9月の上海のETFカンファレンスでは、上海証券取引所の方から個人投資家のETFの認知がなかなか進まないという発言がスピーチの中でありました。中国の市場はアジアのETF市場の中でも取引所内売買が盛んな市場なので、意外な印象を受けました。
ETFカンファレンスの翌日、中国国内のETF運用会社と意見交換をしたときも、中国国内ではETFの認知度が低く、また、ETFという英語名に拒否反応を示す人が多く、中国語名である「交易所交易基金(ジャオイースオジャオイージージン)」という名前は長すぎるという批判を受けるという発言がありました。そこで、中国では、証券取引所と運用会社が一緒に宣伝用パンフレットやビデオを作成し、ETFの普及に努力しているとのことでした。
ETF自体の認知がなかなか進まない悩みは中国も同じなのだと感慨を新たにしました。普及活動の手法も我々と同じようなことを行なっているので、もし効果的な普及手法が発見できればそれは大発見だと思った次第です。

『ETFの流動性』は市場における出来高の多さだけではない

8月末の香港のETFカンファレンスで行なわれた、ETFの運用会社、マーケットメーカー専業会社、投資家の座談会で、「ETFの流動性」についてたいへん興味深い話を聞くことができました。投資家が投資をするETFの選択基準としては主たる基準がETFそのものの市場出来高だとし、米国市場のETFから選択すると発言したときのことです。マーケットメーカーを専業にしている方から、ETFの本質的な流動性はETFの投資対象の流動性にあるのに、その行動はいかがなものかという疑問が呈されました。ETFの投資対象市場の取引時間とETFの取引時間が重なっているのが高い流動性(量・価格=少ないスプレッド)が提供できる条件であり、ETFの投資対象市場の取引時間とETFの取引時間を見ながら最適な投資対象のETFを選択すべきであってETFの取引を米国市場に限定するような合理性は無く、各国ETF市場(ローカルETFマーケット)を見直す必要があるという発言でした。このような発言は、今までのカンファレンスでは聞くことはありませんでした。価格形成に関してもそうですが、税効率の観点からも、ケースバイケースでよく見比べる必要があるということの含みのある発言でした。このようなことからも、アジアでもETFに対する理解が進んできていることを強く感じました。
その座談会が終わって、ある米国のデータ提供会社の方とお話をしたときのことです。座談会のETF投資家の発言について話題になりました。米国でもETFの選定基準がETFそのものの市場出来高にこだわっている投資家が多く、表面上の取引高が低いことで投資対象から外されているETFが多くあり、投資家の投資機会や本当の利益が失われているとの問題意識を持っているとのことでした。その会社ではETFの市場出来高(市場外取引も含め)とETFの投資対象の流動性も合算して見せるようなツールの開発を考えているとのことでした。このようなアイデアが実現すれば、ETFの評価がしやすくなると思いましたので、ぜひ実現をお願いしたいと伝えました。

ETFの流動性については、このコラムやセミナーで発言機会がある度に、触れましたが(流動性についてのコラム: No.18No.19)、今一度、ご説明させてください。
ETFと比較するために、まず通常の投資信託(非上場の投資信託)の流動性を思い起こしていただければと思います。投資信託の投資対象の流動性が、その投資信託の流動性であることはご理解いただけると思いますが、ETFも追加設定・一部解約ができる投資信託の一種であり、まず通常の投資信託(非上場の投資信託)と同じ流動性を持っています。そのうえ、ETF自体を取引する取引所の板があり、市場外の取引(PTSや店頭取引)機会もあるのです。通常の投資信託(非上場の投資信託)も市場外で売買されることがあります。買取というのがそれにあたります。しかしながら、特定の条件以外では、課税処理が難しくなるので一般には売買されることはありません。このことから、ETFは通常の投資信託よりも流動性を付加・拡張した仕組みになっているのが最大の特徴です。特に大口でETFの売買をお考えの投資家は、よくお取引の証券会社にご相談いただくことが肝要です。もし、ご相談をされた証券会社が上記のことを理解せず、適切なアドバイスがでないようであれば、他の証券会社にご相談いただくほうが良いと思います。

ETF、取引所に上場している追加型の投資信託は、大口投資家だけでなく小口投資家にとっても便利な運用ツールになっています。大口投資家にとってはバスケット取引(複数銘柄の株式をまとめて取引する手法)を行ないやすくし、大口投資家しかできなかったバスケット取引と同様の効果が得られる取引・運用手法を小口投資家にも可能にした、投資の民主化ツールです。ETFの特性をご理解いただき、ご活用いただければ幸いです。