2013年9月4日
新ETF組成の難しいところとは
商品性がわかりやすく印象に残りやすい名前を考えること~略称「上場除金」から「上場TPX除く金融」へ
新ETFの組成において難しいことは何だと思われますか。ストラクチャーの検討や法務、税務面での落とし穴といったことや、運用対象の問題なども確かにあることはあるのですが、意外に難しさを感じるのがETFの名前、愛称、さらに略称を考えることです。一連の商品ラインナップにおける整合性と、簡潔にしてそのETFの特性を表す名前というのはなかなか難しいものです。
今回、上場承認をいただいた新ETFの正式名称は「上場インデックスファンドTOPIX Ex-Financials(1586)」で、愛称は「上場TOPIX(除く金融)」、略称を当初「上場除金」にしようと考えていました。略称は、取引所の株価ボード等の表示に使われます。略称を決めるためには、元々次のような制約があって、この中で名前を考えるのはかなり難しく、今回のETFは本当に苦労しました。
●全角4文字、半角8文字まで
●全角文字と全角文字の間に半角文字は不可
●半角文字:カタカナ(濁点は1文字)、アルファベット大文字
●全角文字:漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット大文字・小文字、「’(アポストロフィー)」、「,(カンマ)」
最初この「上場除金」は、読みの「じょうじょうじょきん」から「除菌」を思い出して違和感がありましたが、印象に残るということで予想外に同僚の受けが良かったことから、当初はこの「上場除金」に一旦決まりました。略称については、上場パンダ(1322)のときに苦い思い出があります。どうしてもパンダを使いたかったのですが、この字数制限のため、1文字扱いの「ダ」の濁点がはみ出てしまい、泣く泣く「上場パンタ」になってしまったのでした。
ところが、東証と大証の市場統合後、取引所のシスム仕様が更新されたことに伴ない、全角10文字まで可能になり、半角文字は使えなくなりました。この変更で、略称を当初考えていた「上場除金」から「上場TPX除く金融」にすることにしました。実は、「除金」のままだと金融機関の方々から「俺たちは菌か」と言われることを恐れていたので、内心ほっとしました。
新ETFの連動対象
TOPIXから33業種分類の金融関連業種(銘柄)を除いたもの
さて、上場TOPIX(除く金融)(1586)の設定背景についてご紹介したいと思います。上場TOPIX(除く金融)(1586)の連動対象指数は「TOPIX Ex-Financials」です。“Ex-Financials=除く金融”とあるように、よく知られているTOPIX(東証株価指数)から33業種分類の「銀行業」「証券、商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」を除外した指数です。つまり東京証券取引所に上場する内国普通株から金融株を除外した新指数です。当指数は、2013年6月に算出の方針が示され、そして算出要領が8月に発表、実際の指数の計算・配信が9月2日からスタートしました。
バーゼル規制
金融機関が、金融業関連銘柄に投資をすると、自己資本を減額するという「ダブルギアリング規制」下の投資ツール
このような金融株を除外した指数が必要とされる背景は何でしょうか。
まず、日本の株式・ETF市場の主要投資家が機関投資家(金融機関、預金取扱金融機関=銀行)ということを思い起こす必要があります。これらの金融機関は、金融システムが揺らぐことを避けることを主目的とした、健全性を維持する自己資本比率規制がかけられています。バーゼル規制と呼ばれるものですが、バーゼルIII(バーゼル・スリー)という新しい規制が、海外拠点(支店又は現地法人)を有する預金取扱金融機関(国際統一基準行)に対し、今年3月から段階的な適用が開始されました。また、海外拠点を有しない預金取扱金融機関(国内基準行)に対しては、来年2014年3月から段階適用になります。そのバーゼルIIIの規制において、資本の質向上を目的とした諸規制の中に「ダブルギアリング規制」というものがあります。この規制を簡単にいうと、他金融機関の株式(普通株式)に投資すると自己資本(普通株株式)を減額しなければならなくなり、その結果自己資本比率が低下し、融資といった金融機関本来の活動の妨げとなってしまうことになります。
以下の図表は、上記をまとめたものになります。
そのため預金金融機関(銀行)は金融機関の資本調達手段(普通株式など)には投資がしにくい状況になっていくことが予想されます。 一方、従前のTOPIX(東証株価指数)には、およそ20%の金融株式の比率があります。日経平均も7%程度あります。前述の金融庁の「バーゼルIIIに関するQ&A」によれば、ファンド(ETF)経由の投資でも金融株の比率を特定し、その額を算定、自己資本から差し引かなければならないことになっています(ファンドの明細が開示されていないような場合は合理的に推測して額を算定する必要があります)。そのため、一部、本件に関心の高い機関投資家からはTOPIX Ex-Financialsのような指数の算出・公表、それに連動するETFや私募投信といった金融商品は待ち望まれていたものでした。
上場インデックスファンドTOPIX Ex-Financialsの特徴
●金銭設定型ETF
●1口=1,000円で設定、1口(1,000円)単位の小口売買が可能
「上場TOPIX(除く金融)(1586)」の特徴は、TOPIX Ex-Financialsに連動することに加えてこのような点があげられます。この2点は、今年3月に設定・上場した上場日経225(ミニ)(1578)と全く同じになっており、コラム「もっと知りたいETF!」のNo27でご紹介しました。1つ目の「金銭設定型ETF」にしたことは、ETFの設定・一部解約のできない日を減らし、通常の売買の受け渡しサイクルに間に合わすことを可能にするためです。
「小口売買を可能」としたのは、取引所でETFの売買をされるメインプレーヤーが個人であることによるものです。前述のようなバーゼル規制は個人の投資家の方々には何も影響を受けないので、「上場TOPIX(除く金融)(1586)」に投資する理由はあまり無いのですが、少しでも売買をしやすい環境を整えて、売買していただければとの思いからです。
以上、ご説明いたしました新しいETF「上場インデックスファンドTOPIX Ex-Financials (愛称:上場TOPIX(除く金融)(1586)」は2013年9月26日に東京証券取引所に上場する予定です。引き続き日興アセットマネジメントは投資家のニーズに沿ってETFを開発していく所存です。日興アセットマネジメントのETF、上場インデックスファンドを宜しくお願いいたします。